【詳細図解】型抜きと塗り足しの関係「リスキーなカットぎわとは?」印刷用データの注意点
- 2023.10.30
- コラム・知識
![印刷用データ作成のノウハウ。型抜きと塗り足しの関係詳細図解。デザイナー向け記事](https://www.inashin.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/ic_nuritashi_cut-9-1024x688.jpg)
こんにちわ。ラミネート商社歴47年の㈱稲進(いなしん)です。
弊社では印刷からラミネートなど各種加工を承っており、お客様から印刷用データのご入稿をお受けしています。
今回はカットラインと絵柄の関係についてご案内する記事となります。
─当記事の内容─
・印刷用カットデータ作成の注意点
・カットラインと絵柄のリスキーな関係性
「カットラインに色の境界が接した位置関係は、カット誤差が目立ちやすい」
この記事はこんな方にオススメです。
- グラフィックデザイナー
- DTPオペレーター(印刷用データ作成担当者)
- カットパスと絵柄の関係について詳しく知りたい方
カットラインぎわのリスクおよびセーフティ・ゾーンの考え方についてご説明します。
詳しく見ていきましょう。
目次
カットの「きわ」に色の境界が密接したデザインはカット誤差に弱い
カットの処理がキビシい例。
「色の境界がカットぎわにあるデザイン」。これは困難です。
![デザイナー「お花の形に沿って切り抜いてほしい」カットラインの「きわ」のところで色の切り替えがあるデザイン。NG。カット誤差が目立ってしまうリスキーなデザイン断裁の位置関係です。難点・型抜き作業時、角合わせがキビシイ。デザイナーとしても塗り足しを作るのが難しい。](https://www.inashin.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/NGreiDesign-1-1024x803.jpg)
なぜ、このようなデザイン&カットラインの関係がキビシイかを、説明していきます。
カット誤差が生じるとどうなるか
カット(型抜き)工程のズレは物理的にどうしても出てしまうものです。ジャストの位置で切るのは困難です。
そこで、「塗り足し」という絵柄の延長を外側に付けるのが印刷データ作成の基本ですが、カットラインぎわで色の切り替えがあるようなデザインだと、延ばすのも難しいものです。
谷間のところで隣接する色「どちらをどう延ばせばいいの?」と行き詰まります。
![ズレのリスクを考慮されていないNG例。デザイナー「デザインは決まった。じゃあこれから塗り足しを作ろう」ん?「隣り合った色、どっちの色を塗り足せばいいんだ?隣り合わせの色を半分こで塗り足した。これが精一杯か。イラレ上の操作も結構面倒で細かい作業だったな。そうですね。これが次善の塗り足し処理となります。ただ、これでもカット誤差で隣の色が(少しですが)ビミョーなかたちで出てしまいます。](https://www.inashin.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/ngrei_4koma-3-413x1024.jpg)
とりあえず「両方の色で半分ずつ延ばす」という苦しい感じの塗り足しをつけることになります。
それでも…
カット誤差が生じると↓このような苦しい結果になってしまいます。
![苦肉の策の塗り足し。しかしカット誤差でこうなってしまいます。※図解として見やすいよう誇張しています。](https://www.inashin.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/zureruto_kounaru-1-802x1024.jpg)
上下左右どちらの方向にズレても、干渉してしまいます。
というわけで、
色分けとカットラインとが緊密状態にあるデザインは、干渉が避けられず、仕上がりがキレイにならない危険度が増してしまうのです。
![NG例](https://www.inashin.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/irokyoukai_NG.jpg)
1mm前後はどうしてもカット誤差が生じる可能性があります。誤差が目立たないよう、あらかじめ「ゆとり分」を含めてデザインすることをオススメします。
型抜きの仕組みイメージ
「なぜ、ズレるの?ズレなければいいでしょ。」と思うデザイナーさんがいらっしゃるかも知れません。理由をお伝えしていきます。
弊社では大ロットの変形ラミネート加工は、金型を作り、それで「型抜き」をして大量にこなしていきます。
(枚数・納期など諸条件によります。)
![金型。クッキーの抜き型のようなイメージ。金属板を手作業で叩いて曲げて製作されたもの。精度は高くない。複雑な形は不向き。トムソン型/ビク型。](https://www.inashin.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/kanagata-2-788x1024.jpg)
大量の紙(印刷+ラミネート済)を束にして抜くため、1番上の紙はジャスト位置でカットできても、下の方はズレが生じます。
![横から見た型抜きの仕組み。重ねた大量の紙に上から金型を強く押し込み一気に抜きます。紙が多少ズレます。押さえてはいますがそれでもズレます。上の方の紙と下の方とでも誤差が生じます。物理的にどうしても生じる「ぶれ」です。刃の厚み、圧力が厳密に一定にはならない。紙の伸び縮みなど](https://www.inashin.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/yokokaramita_katanuki-3-500x1024.jpg)
刃自体にもわずかに「厚み」があります。刃の厚みが0でない限り、0mmのドンピシャでカットすることはできません。絵柄の調整で「目立たないように」するしかありません。
※小ロットの場合はプロッターという機械で1枚ずつカットします。精度は金型より高いですが、それでもカットラインぎわに色の境界があるデザインはお控えください。
──どれくらいが「気になる」?
※絵柄のサイズによっても、ズレが目立つかどうかの印象は変わります。小物だと目立ちますし、大判だと気にならない確率は上がります。
※色の対比でも印象は変わります。
相対的な評価となり個々人の感覚差もあります。
修正例:カットぎわに「ゆとり」エリアを設ける
「じゃあどうしたらいいの?」と思いますよね。
絵柄(オブジェクト)とカットラインとの間に、「ゆとり」部分を設けることをオススメします。
![どうしたらよかったの?NGカット誤差のリスクを考慮されておらず、合わない所が目立ってしまう。角合わせがキツイ。OK絵柄の周囲に1色(またはどこで切れてもいいようなパターン柄)を設け、塗り足しもその延長にする。どこで切れてもズレが目立たない水玉背景など](https://www.inashin.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/NG_shuuseirei-2-1024x916.jpg)
ゆとり部分には、1色ベタか、グラデーション、または「どこで切れても気にならないようなパターン柄」を入れましょう。
(※塗り足しとは別です。塗り足しはカットラインの外側にさらに付けるゆとりです。)
微細な絵に沿って細いカットをするのは不可
まれにこういったご希望をされる方がいらっしゃいます。微細な輪郭に沿って切りたいという。
![人物の輪郭でカットしたい。アニメの繊細な人物画](https://www.inashin.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/jinbutsunisotte-2.jpg)
残念ですが、繊細なタッチで描かれたイラストの輪郭でのカットはできません。(塗り足しをどう付けるの!?というのも難しいですよね。どの色を拾って延長したらいいのか…??)
仮にですが──。カットできたとしてもトゲトゲした細い所は折れてしまいます。
【印刷物のデザインデータ作成のコツ】
イラスト・デザイン作成の初期段階から、カット事情を見越して背景を広めに用意しておけば、あとで困りません。
白や黒など1色。あるいはどこで切れてもおかしくないようなグラデーション、パターン、地模様がおすすめです。
まとめますと…
![微細な絵の輪郭に沿ってカットできるの?無理です。ひと周り大きめのゆるやかなカットラインでお願いします。](https://www.inashin.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/10/bisai_cutmuri-1-1024x507.jpg)
人物などより一回り大きなところで、ゆるやか・なだらかなカットラインにするのが適切です。
商業施設などで見かける等身大パネルも、このような「大きめ・ゆるやか」カットになっています。
その他の印刷用データ作成の手引(稲進版)も合わせてご覧ください。
【PDFファイルで読める:稲進への入稿手引き(708KB)】←ダウンロード、プリントアウトしてお使いいただけます。
さいごに:セーフティな印刷カットデータ作りでキレイな仕上がりを
カットラインぎわのリスクおよびセーフティ・ゾーンの考え方についてご案内しました。
仕上がりをキレイにするための作成の考え方です。お役に立てれば幸いです。
以上、ラミネート商社歴47年を誇る㈱稲進(いなしん)がお送りしました。
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